国内法のもとでICOを行なうには? – 創法律事務所 斎藤弁護士が語った法的整理

今年の夏からICOの相談が増え始めた

AnyPay株式会社が主催したICO Conferenceにおいて、ICOの法的整理と題した講演が行われた。登壇者は弁護士事務所である創法律事務所の代表弁護士 斎藤創弁護士である。なお以下の記事は登壇内容を元に編集したものである。また創法律事務所が当日の資料を公開したので記事末尾にリンクを載せておいた。資料末尾には海外の参考例も載っている為ぜひ直接資料にも目を通していただきたい。

斎藤弁護士は2013年夏にビットコインと出会い、2016年に現在の創法律事務所を立ち上げた弁護士で現在仮想通貨やビットコイン、FinTech企業の法律相談を専門に行っている。

株式会社bitFlyerの社外取締役を務めている同氏は、今年の夏頃からICOの相談が増え始めたと語る。

1.ICOに適応される法律について

まず知っておかなくてはならないのは、国内において記事掲載時点においてICO特有の規制はない。即ち商品によって適用される法律は異なるという点だ。

仮想通貨法(資金決済法の中)、前払式支払手段規制、ファンド規制、民法、消費者契約法、出資法などが該当する可能性がありその一つ一つに対して慎重に見ていく必要があるという。

またその際、ICOの対象が法令上の仮想通貨に該当するかどうかが関わってくる。

仮想通貨法とICOの関わり

法令上の仮想通貨については日本でICOを考える上では間違いなく知っておかねばならない知識であろう。そもそも法令上には1号仮想通貨と2号仮想通貨という2種類の定義が存在する。

1号仮想通貨とは、

①「不特定の者」に対し使用でき、②「不特定の者」と交換できる③移転可能な④電子的財産価値を有するもので、ビットコインやライトコインこれに当たる。イーサリアムも決済用途での使用が増えていることからこれにみなされるという発言をしていた。

2号仮想通貨とは、

①「不特定の者」との間で②ビットコイン等と相互交換できる③移転可能な④電子的財産価値を有するもので、即ち多くのアルトコインはここにあたる。

さらに考えるべきはICOで発行されるコインはそもそも「仮想通貨」ではないことがある。どういうことだろうか?例えば原則上は取引所への上場を果たしていないトークンは仮想通貨ではないとみなされる。

最近話題になっているMUFGコインやJコインは円やドルにより表示される(1円=1コインなど固定レートでの交換が可能な)為そもそも法令上仮想通貨には該当しない。

前払式支払手段規制とICOの関わり

企業発行のコイン等で、1コイン=○円のようにコインを何らかの物品の購入やサービスの提供に用いる場合は前払式支払手段に該当する。通常この前払式支払手段ににはSuicaやビール券/図書券などが該当するのが発行するコインがこの規制に該当する場合、未使用残高の2分の1を供託しなくてはならない。

LINE上でのゲームのポイントが同規制にあたるとされ関東財務局から指摘をされたニュースは覚えている方も多いだろう。

金商法(ファンド規制)とICOの関わり

配当や収益の分配がないコインについては、現行の金商法に該当する可能性は低いという。

配当が行われる場合はファンド規制に該当する可能性が高い。この場合の定義は他人から金銭を集めた上で、事業に投資し投資家に対して配当等を行なうことを指す。

ではビットコインやイーサリアムで出資を受ける場合はどうだろうか。斎藤弁護士によると文言上はファンド規制に服さないという。ただ脱法的な場合は規制可能性があるとも言及していた。

消費者契約法、民法にも留意を

これはコイン発行に限った話ではないのだが、虚偽の説明や重要事実の故意による不告知、断定的判断の提供等は、取り消しや損害賠償の可能性がある。当然のことながら消費者契約法や民法を守る必要もある。

2.ICOで得た利益と法人税の関わりについて

さて、自社でICOを考える方にとって一番気になるのがICOと法人税との関わりではなかろうか。実際ICO Conferenceの参加者も投資家よりも起業家が多く、段階は異なれど自社でICOを検討している会社は多いように見受けられた。

まずこの法人税との関わりに入る前に、ICOは税金の観点からもそれほどEASYなものではない、と斎藤弁護士から発言があった。どういうことだろうか、詳しく見ていこう。

法人税の観点だが、コインの売上は原則「売上」に計上されるという。その為売上から経費を引いた残りが「利益」として法人税が課税される対象となる。なお実行税率は30.86-34.81%だ。

ここで斎藤弁護士は、仮にICOで50億の調達を果たしたとして支出がない場合を想定すると単純計算で15億円程課税される対象になるという例を示した。ICOを行なう企業にとってこの税金負担は非常に大きい為当期の開発費等の考慮分はあるのかや、前記までに利用できる繰越欠損金があるか、また翌期の欠損金の繰越による還付が想定できるかの3種類を考慮すべきだと発言していた。

そして更に消費税も考慮する必要がある。仮想通貨法上の仮想通貨に該当する場合は非課税なのだが、この定義に該当しない場合は売上の8%が消費税として課税される。この部分に対しても設立一年目の会社等で消費税非課税を受けられるかや、仕入税額控除を用いて打消が可能化などを検討する必要があるという。

以上の説明を踏まえて斎藤弁護士は、国内企業がICOを行なう場合タックスストラクチャリングが重要であるとの認識を示していた。

ここまで聞いてわかるように、国内企業が仮にICOを行い資金調達に成功したとしても、その額が丸々サービスやプロダクトの開発に用いることはできないという点をICOを計画する上で必ず考えておくべきだろう。

(参考:創法律事務所作成資料(PDF) / ICO Conferenceでの斎藤弁護士の発言)

※当サイト内では原則暗号通貨という表現を用いておりますが、法律内で仮想通貨という表現を用いていることから当記事内では仮想通貨という表現を使用しました。

 

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