「単なる資金調達の手段ではない」国内初1億円以上のICOを実施したALISは、ICOの真髄をどう捉えているのか

(右)安 昌浩氏:ALIS 創業者/CEO (左)水澤 貴氏:ALIS 共同創業者/CMO ICOが広がってきている。本メディア「ICO NEWS」を運営するプロトスター株式会社も、2017年12月にICO支援に関する事業提携を発表したばかりである。 ただ、ご存知のように詐欺的案件も多く、中国や韓国ではICO自体が禁止されている。日本国内でも徐々に規制が整備されるなか、これからICOとどう向き合えばよいのか。 そこでICO NEWSでは、日本ではじめて1億円以上のICOを実施したALISに話を聞いた。ICOを決断した背景や、ICO実施後の動きといったプロジェクトの話に加え、現状世の中で認識されているICO像に対する違和感、さらに今回の規制をどう捉えているかなど、ICOを取り巻く環境についても、国内ICOのパイオニアならではの非常に興味深いお話を聞くことができた。   はじめに:ALISとは ALIS ブロックチェーン技術を用いて、新しい報酬システムを導入したソーシャルメディアプラットフォーム。収益源を広告に依存しているためにPVを追い求め、質の低い記事が量産されるといった、昨今のWEBメディアの構造的な問題に切り込んでいる。信頼性の高い良質な記事を書いた人と、それを発掘した人両方にALISトークン(報酬)が支払われる仕組みにより、プラットフォーム上に良質な記事が集まるインセンティブ設計がなされている。 2017年9月に日本ではじめてICOを実施し、当時の評価額で4.3億円を調達した。   ICOは、サービスを愛する人とのコミュニティ形成の手段である - ICOによる資金調達のあと、どのようにプロジェクトを進めているのでしょうか。 総じて順調です。2018年4月のクローズドβ版リリースに向け、検証したいポイントをシャープにしながらサービス開発を進めています。同時に、ICOの価値を最大化すべく、発行したトークンの使い方の設計や、国内外にサービスをより広めていくための「アンバサダープログラム(詳細は後述)」にも注力しています。ICOのダイナミクスを活かすには、海外にアプローチしない手はないですからね。 日本各地でミートアップを開催したりなど、草の根的な活動も多いのですが、全て戦略的に行っているのがALISの特徴だと感じます。 また事業以外では、ICO実施プロジェクトとしての注目も集まっており、イベントへ登壇させていただく機会も増えてきました。   - 日本初のICOに踏み切った背景はなんですか? より多くの金額を集めることのできたタイミングでしたが、あえて調達額にキャップをつけた(下限3.5億円、上限30億円)ことも先進的でしたよね。 日本初とはいえ、海外ではもう行われていたのでむしろ遅いくらいの認識ではいました。 資金調達額にキャップを設けたことは、はじめからICOを資金調達の手段ではなく、中長期的にサービスを成長させるための手段として捉えていたので、我々にとっては当然のことでした。下限を設けないと何もできなくなりますし、逆に多く集めれば集めるほどよいというわけでもありません。初めから資金を集めすぎると、その後トークンの価値をあげる難易度が上がり、トークンホルダーに利益を還元できなくなってしまうからです。 そういった意味でも、我々はALISを愛してくださる方々との関係性、コミュニティを非常に重視しています。ALISの目指す姿に共感し、トークンを所有してくださった方々から常にフィードバックを貰いながら、ともにサービスをよりよいものにしていこうと思っています。 他のICO案件を見ていると違和感を抱くものも多くて、それはやはり資金調達を最大の目的にしているからだと感じています。より多くのお金を集めることを目的にして、FacebookやTwitterで幅広く広告を打ったり、機関投資家などから出資を募ろうとすると、同様にお金儲けを目的とした投資家が多く集まります。しかしこのような投資家の方々のサービスに対する必要性や愛情は少ない可能性が高く、サービス設計の観点に立てばノイズにもなり得ると思っています。やはりシードの段階で数十億円は集めすぎな印象ですね。   - お金を集めすぎるとメンバーが分裂する可能性も高まる気がします。 そうですね。どうしても世界観ではなく、お金でつながる関係になってしまうと思います。 やはり我々は、ALISを通じて目指す世界を実現したいし、そのために共感してくださる方々と一緒にサービスを大きくしていきたい。だからこそ、ICOという手段を選択したのです。人間が持てる資本は、金銭資本(文字通りお金)、自己資本(スキルなど)、関係資本(信頼、ネットワークなど)の3つに大別でき、最も大切なのは関係資本だと思っています。そしてICOは、一瞬で多額を集められることよりもむしろ、関係資本を強めることができることこそに、その真髄を宿しているのです。我々はお金を持っている方というよりも、ALISに共感してくださる方にアプローチをしましたし、実際トークンホルダーはそういった方々が中心です。そうやって丁寧にコミュニティを温めていき、その関係を通じてサービスを良くし、価値が大きくなっていけば、金銭資本は結果的に付随してくるものであるはずです。初めからお金を集めることを目的とするのは歪んでいると感じます。 トークンの価値は大きく2つあると思っていて、一つは流動性の高さ(サービス内利用ができること、取引所での取引が可能であること)、そしてもう一つはトークンを軸にコミュニティを形成できることです。サービスが出来ていないうちは必然的に後者にアプローチすることになりますし、コミュニティ全体でサービス価値を高めていければ、流動性も最大限活かすことができる。この順番が正しいと思います。   - ALISが取り組んでいるアンバサダープログラムも、コミュニティ形成の一環ということですね。実際にカードまで作っていますよね。 (ALISブログより引用) ※ALISのアンバサダープログラム ALISファンや投資家の方に、ALISの魅力を積極的に発信してもらうためのプログラム。社長を含めたファウンダーと直接コミュニケーションをする機会があり、あらゆるアイディアを提案することができる。 はい。アンバサダーになるのは、トークンホルダーでなくても、ALISのコミュニティの発展に貢献し、サービスへの良質なフィードバックしてくださる方なら誰でも良いと思っています。また、これは賛否あると思いますが、我々はアンバサダーの方たちには報酬を渡しませんし、もちろんインサイダー情報が流出するということもありません。なぜならサービスを良いと感じてくれたら自分でトークンを買ってくださいますし、サービスの価値を高める活動をするのがアンバサダーです。また、報酬を出してしまうとALISへの貢献がミッション化してしまって、関係性が歪んでしまう。それぞれの方が得意なことややりたいことを活かして、アンバサダー本人にとっても意味がある形で貢献していただければそれでいいと思っています。 代表はもちろん、ALISの開発メンバーに対しても直接質問できるというツールを提供するだけで、距離はグッと近くなると思ってます。 アンバサダーの申込みはすでに150人弱くらいいますし、海外からも50人ほど申し込みがあります。実際、トークンホルダーやアンバサダー含め、ALISコミュニティにいる方々にどれだけ支えられているか。コミュニティのSlackやTelegram上で、必ずと言っていいほどオンラインになっている方もいますし、Twitterで「おれがALISを守るから」と書いてくださる方までいました。   金融庁による規制は日本がICOをリードする上で「チャンス」 - 最後に、国内のICO市場は今後どうなっていくと思いますか。規制も整備され始めています。 ※参考:金融庁の法整備と、それを踏まえた日本仮想通貨事業者協会の対応 「ICO事業に関係する事業者においては、自らのサービスが資金決済法や金融商品取引法等の規制対象となる場合には、登録など、関係法令において求められる義務を適切に履行する必要があり、登録なしにこうした事業を行った場合には刑事罰の対象となる旨の注意喚起」が金融庁からなされている。 現状、日本は仮想通貨の法整備を世界に先駆けて行っており、ICOに関しても世界をリードできる可能性があると思っています。そうした状況を踏まえた上で、短期的にはマイナスに作用すると思いますが、長期的にはチャンスだと捉えています。 短期的には、ICOの障壁が高くなったことによりICO件数が伸びず、プラクティスが蓄積されにくくなったことや、仮想通貨交換業者は誰もが取得できるわけではないので、取引所側にパワーが集まりやすくなる可能性はあります。 とはいえ、残念ながらICOの多くには詐欺まがいの案件もあることも事実ですし、何らかの規制は必要です。そうした背景もありICOそのものを禁止した国が存在する中、日本ではこの法の中ではICOが認められたというわけですから、中長期的にはチャンスです。仮想通貨交換業者も増えていくと思いますし、我々がそうなってサポートをしても良いですから。税制が整えば、日本がICOをリードすることも十分ありえるでしょう。   取材を終えて 今回、国内ICOのパイオニアとも言えるALISの方々に話を伺い、新しいテクノロジーや仕組みというのは結局手段であり、どう捉えるかによって実際の価値は大きく変わることを再認識することができた。ICOやトークンエコノミーの本質を彼らなりに捉え、ステークホルダーと誠実に向き合っていることが伝わり、非常に濃いインタビューであった。  
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