中国当局のICO禁止令の発表とICOマーケットの今後の展開について

景色が変わった24時間 まず最初に、この24時間でICOを取り巻く話が大きく転換したことを告げなくてはならない。あまりに猛烈に動きがあったこの数日を振り返って見ていきたい。 当記事を掲載した2017年9月6日から遡ること数週間ほど前に以下のようなニュースが流れた。 8月18日の会議で、中国の中央銀行と銀行および証券監督当局の関係者は、ICOの規模のコントロール、情報開示の強化、リスク警告文書の要求、さらには一時的な禁止についても議論したとTencent Financeは報じた。 (引用:エムトレ) 2017年前半だけで、中国国内で行われたクラウドセールを含むICOの調達総額は約26億元を越えていた。 国営の新華社がオンライン上の金融活動を監視する政府組織のデータとして7月に伝えたところによると、中国では今年、65件のICOがあり、10万5000人から26億2000万元(3億9460万ドル)を調達した。 (引用:Reuters) 記事掲載時のレートで計算すると、437億円もの金額となり、相当な規模の取引が日常的に行われている状態にあったことがよくわかる。 当メディアで公開した記事の中で「ICOはバブルである」という明確な表現をしたが、それは間違っていないと言える数値であるだろう。 中国政府がICO取引の禁止を発表 上記の検討中とのニュースから、実際にICOが禁止されるという方針が決まるまでほとんど時間はかからなかった。2017年9月4日、中国政府は以下のステートメントを発表した。 中国は4日、新たなデジタル通貨をローンチして資金調達する「イニシャル・コイン・オファリング(新規仮想通貨公開=ICO)」について違法行為と判断し、個人や団体に禁止令を出した。 (引用:Reuters) 注目すべきはICOを”違法”と認定したことだ。これにより具体的には、クラウドセールを含む一切の暗号通貨公開行為を禁止され、更に既にイーサリウムなどで発行された独自暗号通貨について”返済”を求めている。。ICO事業者は速やかに当局に対し届け出を行なうよう通達されているという。 ICOによる資金調達を完了した個人または団体は、調達資金の返済に向け準備を進めるべきと指摘 (引用:Reuters) 中国政府はICOと称されるプロジェクトの99%は詐欺的な行為であると述べている。確かに、当メディアサイトを立ち上げの際、全世界のICO状況をリサーチしたが、その際あまりにもずさんなクラウドセールの募集を数多く見た。それらの中には、そもそもが詐欺目的ではないかと思われるような募集や、概念を簡単に説明しただけで、実現可能性が判別が出来かねる案件が数多く含まれていた。 その点において、クラウドセールに参加する個人を保護するルールが欠落していたのは間違いない。 ICOがクラウドファンディングと異なる点 ICOによる企業側のメリットは、下記のようなものがある。 トークンを販売するクラウドセールを実施(クラウドセール) 集まった資金を元にメンバーを増やしたり開発を進める トークンが取引所に上場を果たす(ICO) 流動性が確保されたトークンがさらに価値を持つ 従来のエクイティ調達と大きく異なる点は、シード期にも関わらず桁違いの資金が集まること、そしてトークンを発行し、既存の暗号通貨と交換させることで世界中の一般人から資金の調達を可能にした点である。 よく見れば、クラウドセールのスキーム自体は、今までの一般的なクラウドファンディングの仕組みと極端に違うわけではない。ICOがクラウドファンディングと大きく異なるのは、購入したトークンが更に価値を増す可能性があることだ。 クラウドファンディングであれば支援のお礼として、例えばある商品の詰合わせとお礼の手紙が届くなどのリターンがある。普通に考えて、この詰合わせ商品の価値が、ある日突然、数倍になり、この商品を販売して、大きく儲かるといったことはまずない。 しかし、ICOはそうではない。クラウドセールからICO(トークン上場)を果たすと、トークンの流動性が確保された状態になり、トークンの価値が数十倍に跳ね上がるような事例が複数出たのである。これが投機筋を呼び寄せ、結果的に中国国内においてICOバブルが発生した理由のひとつとなったのであろう。 そのような中、今回のICO禁止令の発表で、現在最もメジャーな暗号通貨であるイーサリウムやビットコイン、直接関係のないアルトコインまでもが、前日比10%を超える大きな下落となった。 この動きと同時に、中国国内ではICOプラットフォームを行ういくつかのサイトが突然閉鎖をし、既にクラウドセールを行った企業の中で返金対応を実施する企業が出はじめている。 中国政府によるICO取引の禁止の意図 中国政府によるICO取引の禁止の意図はどこにあったのだろうか。当局の意図を読み取るに、大きく3つの観点から禁止すべき、との結論になったのではないかと考える。 ICOによる資金の国外流出の阻止 巨大市場を当局の監視下に置きたい思惑 トークン保有者/クラウドセール参加者の権利保護 ここから先は推論であるが、最も考えられる理由は一つ目に挙げた「資金の国外流出の阻止」であろう。以前より、国外への資金流出に対して否定的であった中国政府にとって、暗号通貨から更にトークンに交換し保有される資金の追跡は難易度が高く、ICOそのものを禁止せざるを得なかった、という側面が大きいのではないだろうか。 更に、急激に膨張し400億円を超えるようになった巨大マーケットの存在を見過ごすことができなくなったという理由ある。今後、中国政府が主導する形でのICOプラットフォームが整備され、いずれそれが発表される可能性もあるだろう。 今後のICOマーケットの行方 改めて、今後ICOを取り巻く環境はどのようになっていくのだろうか。現状、ICOを明確に規制している国は、編集部で把握している限りでは、禁止とした中国を除いてアメリカ、シンガポール、韓国の3カ国だ。 国によって若干解釈は異なっているものの、現時点において一番の論点は”トークンが有価証券相当であるかどうか”という点にあると私は認識している。例えば、過去、トークンをベースとしたファンド組成を目的にクラウドセールをし、その後アメリカ証券取引委員会(SEC)に有価証券相当と認定されたThe DAOのような事例もある。 逆に考えれば、トークンそのものの価値は取引所への上場によって値上がりする可能性があるものの、”それとは別に利益が分配される形式のトークン”を発行する企業体や保有している保有者は既存の株式との差異を認められず、同等という認定をされる可能性がある。 なお、今後他の国々でも規制が広がる可能性が高いと予見している。短期的には法律の整備が行われていない国家に属する企業が、従来と同じようなクラウドセールを行なうことが予想されるものの、各国当局の規制などにより次第にICOマーケットが小さくなる可能性もあるだろう。 しかし、ICO自体は未上場を含む企業と個人とが契約できるシステム・概念として非常に面白いものがある。今まで投資し辛いとされた領域や初期から巨額の設備投資が必要なスタートアップなどの資金調達手段としては相応の価値があると考える。 健全にICOマーケットが拡大するためにも、最低限のルール整備が急務であると思うが、ICOの概念が持つ魅力自体は普遍的なものであり、今後も成長を願うものである。

ICOはチューリップなのか?

南海泡沫事件 ICOに関連する情報に接すれば接するほど、ICOはバブルであるとの認識が深まっていく。タイトルではオランダのチューリップバブルを揶揄して、チューリップを取り上げたが、タイプとしては南海泡沫事件に近いものを感じる。 1719年イギリスの南海社を中心にバブルが発生した。1720年に1株100ポンドであった株価が、6月には1,050ポンドと10倍近くに跳ね上がり、そして崩壊したという事件である。 (南海社の株価推移) 個人的に興味深いのは、南海社のバブルに追随して多くの株式会社が設立されたことである。当時は株式会社の設立は許可制であったのだが、この時多数の企業が無許可で設立されたのである。タイプが近いと感じたのは、まるでIPOという許可を得ず、広くコインをマーケットに売買できる現状が似ているように感じたからである。 南海社は1720年4月に現金での株式売出しが行われたのだが、200万ポンド分という大型調達がわずか1時間で達成したという。これもまるで最近どこかで聞いたような話である。 ちなみにイギリスによりバブル会社と認定された会社には下記のような会社がある。 四角の砲丸を発射し、世界に大きな革命を起こす会社 鉛から銀を取り出す会社 大きな利点があるが、それが何なのかは誰にも分からない事業を運営する会社 この南海バブルが崩壊したのは、株式ブームに規制をかける「泡沫禁止法(Bubble Act)」が成立したことがきっかけである。ICOもいずれBubble Actが行われるのは時間の問題であるし、ICOの発展には適切なルールは必須である。 さて、ICOがバブルであるということには重要な示唆はない。読者の多くもICOの盛り上がりに若干の違和感を認識していると思うからだ。 私が重要な示唆があると思っているのは、ICOがなぜこんなにグローバルで盛り上がっているかということだ。暗号通貨売買という意味では同じなのだが、いわゆるビットコインなど著名なコインを売買するコイン投資とICOは違う潮流の中にあると考えている。 私が思うICOにおける本質的な潮流は「資金調達の民主化」である。 資金調達の民主化 ICOを行う企業は、ほとんどがスタートアップである。彼らがICOに積極的になる理由はとても自然なことだ。それは、単純に資金調達がしやすく、また金額が集まるからである。残念ながら同じ理由で詐欺師たちも集まってしまうのだが。 (南海バブルの風刺画) 現在、スタートアップの資金調達の手法は大きく2つある。 間接金融 直接金融 ・・・である。 銀行を中心とした間接金融とスタートアップはあまり相性がよくない。どんなにリスクを背負っても少ない金利収入しか得られない銀行は、ビジネスモデル上、リスクマネーの供給が困難であるからだ。信用保証協会や公庫など公的機関を通じた制度は機能するものの、スタートアップが間接金融から資金調達をするのは厳しい。 では株式に投資をする直接金融はどうか。未上場株式を引き換えに、資金を注入するベンチャーキャピタルは、まさにリスクマネーの華といえる。 アメリカのスタートアップの歴史をひも解けば、それはベンチャーキャピタルの歴史とも言える。それほどにスタートアップとベンチャーキャピタルの関係は深い。それにも関わらず、なぜアメリカでICOが盛り上がっているのだろうか。 それには未上場株式特有の取引コストの高さが原因なのかもしれない。デューデリジェンスから着金までの期間の長さ難しさ、そしていずれEXITを準備しないといけないビジネスモデル。 ICOのメリットのひとつに「取引コストが低い」というものがある。グローバルの人間に対するオファーが出来、すぐに取引が可能。これは相応の魅力がある。 また視点を変えると、ICOの購入側もなぜリスクの高いスタートアップに関与しようとするのだろうか。こちらも資金調達の民主化への要求だと考えられる。 一般人は未上場株式から除外されてきた歴史がある。(もちろん別の立場から言えば、守られてきた、とも言える。)直接の未上場株式投資もだが、プロの目利きであるベンチャーキャピタルへの投資も極めてハードルが高い状況にある。 それがICOを通じて生々しい未上場企業マーケットへのアクセスを手に入れたのである。バブルの終わりと共に手痛いことになると思われるが、この未上場株式市場へのアクセスという経験は想像以上に重要な要素を含んでいる。 資金調達の民主化、ICOにより従来プロしかいなかったマーケットが解放されつつあるように思うのである。この潮流は無視するには、重要過ぎるのではないだろうか。 適切なルールと情報 話は戻るが南海泡沫事件の結果、後に公認会計士制度や会計監査制度が構築されるようになった。このようにICOも徐々にルールが形成され、それに基づく健全なマーケットが形成されていくだろう。 私たちが、このICOメディアの運営を決めたのは、適切なICOマーケットの形成のために出来ることがあるのではないか、と思ったからである。ビットコインをはじめとする暗号通貨ですら、まだバブルの入口かもしれない中、その先をいくICOは、更に情報が混乱の極みとなっている。そのため世界に散らばるICOに関連する情報を整理すべく本メディアを開始した。 ただ、私たちが紹介したICO情報が、購入にふさわしいなどの保証はしていない。ここまで読まれた読者の皆様には理解頂けると思うが、どちらかというとICOはまだ未熟で今後バブルが弾ける極めてリスクの高い領域である、という立場に立っている。むしろバブルが崩壊し、ルールが整備された後の健全なICOマーケットを見据えてのメディアの立ち上げである。 (ルビコンを渡るカエサル) もう、資金調達民主化のルビコンは渡ったのである。これからICOマーケットがどう歩んでいくのか、それを見ていきたい。 (参考・画像出典:Wikipedia)

日本語で読めるICO関連記事一覧 Part1

突然だがICOに関連する情報をどうやって入手しているだろうか。 このサイトを開設した理由にも繋がるのだが、海外の情報サイトも乱立していて情報収集に時間がかかる。さらに実際のところ、時には根も葉もない嘘まで含めて個別のICOの案件に関して書かれた記事やレビューのような記事が乱立しておりICO全体の動向を追うのは簡単ではない。 そこで今回はICO関連の話題を取り上げた日本で書かれた記事の一覧をピックアップしてみた。ぜひさまざまなメディアの情報に触れていただき1つだけでは伝わらない全体像をイメージしてほしい。  

このサイト内でのICO関連名称の定義付け

当サイト内ではICO関連の各用語について以下の通り定義をする。 プレセール:トークンセールス前の先行販売。販売量や購入可能な対象者に制限がある場合が多い。 トークンセール(クラウドファンディング):企業体が独自トークンを発行し暗号通貨を所有する人から購入を呼びかける状態 ICO:独自トークンが取引所に上場を果たし、他の暗号通貨とも交換できるようになるなど流動性が確保された状態 一般的に2の状態のことをICOと呼ぶことが多いが、当サイト内では言葉の由来であるIPOの概念に基づきICOを取引所の流通タイミングと定めている。これにより、当サイトで発信する内容と当サイト外で公開されている文章とで同じ内容を指していても、一部一致しない文脈が出る可能性があるがご了承いただきたい。 ※なおこの定義は当サイト内の記事コンテンツにおいても原則同様である。 2017年8月31日
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